2021年度短期交換留学生
報告レポート2

テキスタイルデザイン専攻4年生から、短期交換留学の報告レポートが届きました。

小島平莉(4年)
グラスゴー美術大学(イギリス・グラスゴー期間:2022年1月~5月)

こんにちは、テキスタイルデザイン専攻4年の小島平莉です。イギリス・スコットランドにあるグラスゴー美術学校での4ヶ月半にわたる留学について報告します。私はファッション&テキスタイルデザイン学科のテキスタイルコースに通っていました。本来は3年生の後期に留学する予定でしたがコロナで延期となり、1月から5月末までの留学となりました。多摩美術大学で3年生を過ごし、多くの技術を学び習得した後に留学できたことは結果としてよかったと感じています。

●学生生活について

テキスタイルコースのスタジオ

私の選択した刺繍の授業の部屋

 留学先では3年生の2学期の授業(イギリスの大学は毎年9月始まり)に参加しました。この時期の私が選択したコースの留学生は私ひとりでした。刺繍、織、ニット、プリントから好きな技法を選択するのですが、私は刺繍を選択しました。多摩美術大学では刺繍以外の技法を学んでおり、まだ学んだことのない技法に触れてみたいと思ったからです。実習室にはテキスタイル専用のミシンルームがあり、いろいろなミシンのアタッチメントがありました。また自由に使用できる素材が沢山あるなど、設備が充実していました。ここで技法を専門的に指導してくださる先生から刺繍を教わるワークショップに連日参加しました。そして、週1、2回ある先生との面談で制作したサンプルを見せ、フィードバックの指導を受け、ミシンルームでまたサンプルを作るというルーティンでの日々を過ごしました。

 参加した課題は『身体のためのテキスタイル』『個人プロジェクト』『デザイン・ドメイン』『DHT』です。特に最初の二つが最も大きな課題でした。『身体のためのテキスタイル』は名前の通り、人間の身体に合うテキスタイルを制作する課題でした。実際に着れる服を作る必要はなく、とにかく体に沿った形や構造、柄などテキスタイルに集中して考える授業です。私は多摩美術大学ではスタジオ3『表現』に所属しているため、身体とテキスタイルについて考えた経験があまりなく、どのようなテキスタイルが身体には求められるのかが感覚としてつかみづらく、先生から薦められたファッションデザイナーや自分で集めた資料を見様見真似で自分なりに解釈し制作しました。この授業では、どのようなコンセプトであるかだけでなく、ビジュアルや構造のユニークさ、自分の目指したい作風が重要視されていたように思います。作品のプロセスが明確かどうか、それぞれの段階がリンクしているか、ドローイングの方法がテキスタイルをより面白くするために有効かどうかも指導の対象でした。授業の中では、プライマリーワークとして一次調査(分野を越えてのデザイナー、アーティストの作品資料収集)、二次調査(それを踏まえて自分の日々集めた画像資料)、ドローイング、3Dドローイング、サンプル制作、本番サンプル制作の順で、この軸に沿うように進めていくことが推奨されていました。最終的には写真のように各自サンプルとプロセスを机に展示し、先生方がそれをみて回って、後日フィードバックをもらうという流れでした。そしてファッション&テキスタイルの学生たち全員が参加する学外ファッションショーで他の生徒たちと一緒に展示もさせていただきました。

制作中

課題の講評時の展示

学外展の様子

私の作品

『個人プロジェクト』では、上記のプロセスを4年生の卒業制作の前段階として重点的に行い、テキスタイルそのものはこの課題では制作しなくて良いというものでした。ちょうど帰国後すぐに卒業制作の準備に取り掛かる予定でしたので、私にとってタイミングが良い課題でした。私はもともと自分の制作プロセスを整理することが苦手でしたので、この課題は苦手克服に大きくつながったと思います。先生に私がテキスタイルのための3Dドローイングが苦手なことをご指摘いただき、段ボールを使って立体的に構造を試行錯誤できるようになったのもこの課題に取り組んだ成果と感じています。卒業制作に向けて、どのように作品を作り上げるかの素地が整ったような手応えを実感しています。

●留学生活について

エジンバラ旅行

デンマーク旅行

パリ旅行

 私は運よく学校のフラット式の寮に入ることができました。驚いたことにフラットメイトが全員留学生でした。ドイツ人1人、フレンチカナディアン1人、アメリカ人3人が同じフラットに住んでいました。毎日一度はキッチンで過ごし、フラットメイトととにかく沢山話すことを意識しました。おしゃべりが楽しいこともあるのですが、私のフラットメイトは全員4ヶ月のみの短期留学生ということもあり、短い時間で仲良くなるにはやはり毎日話すしかないと思ったからです。エジンバラやデンマークに一緒に旅行する機会もあり、とくにデンマーク旅行では友好関係を築くことができたと感じています。

そのような経験を繰り返すうちに初対面の人にもどんどん自分から話しかけられるようになりました。ロンドンへ行った時はシンガポール出身の友達や多摩美術大学卒業の先輩に会うこともでき、人と出会い人のことを知る喜びを感じています。同時期にロンドンに留学している同級生の松浦美宇さんと合流し、パリに旅行に行くこともできました。ヨーロッパの中でも国民性や雰囲気が違っており、他の国にもいつか訪れてみたいです。

 4ヶ月だけでは英語の語学力自体が急激に上がるということはあまりありませんが、恥ずかしがらずに話し出すという瞬発力は身についたと思います。フラットメイトたちが私の拙い話をしっかり聞いてくれたことがモチベーションにつながりました。留学生活終盤では、英語が上手になったねと言ってもらうことができ嬉しかったです。

留学を通して大学での学びの他にとても大きな収穫が一つあります。それは日本だけでなく海外全体に意識を向けるようになったことです。例えばウクライナの件ではヨーロッパは陸続なため、イギリスはとても近く「ヨーロッパ全体で問題を共有する空気」を肌で強く感じました。街の人たちはみんな穏やかに暮らしているのですが、どこか皆頭の中や生活の中にヨーロッパ諸国への問題意識が根付いているように見えました。大学の中でも学生たちが自らウクライナのための物資の寄付を募っていたりしました。

世界情勢への関心は尽きませんが、ロンドンとパリには美術館が数え切ないほど沢山あり、建築物など素晴らしいもので溢れていました。留学を経験したことで、国単位のイメージや偏見を少しでもなくし、それぞれの文化を尊重し個人として交流できるようになりました。もっと多くの国々をまわり、世界中の人々1人1人と向き合えるようになりたいと思いました。

また、この留学をするにあたり、両親や先生方や研究室の皆様、国際交流センターの皆様、先輩、友人に沢山助けていただきました。心より感謝申し上げます。