2021年度短期交換留学生
報告レポート1
テキスタイルデザイン専攻 4年生から、短期交換留学の報告レポートが届きました。
池部ヒロト(4年)
ウィーン応用美術大学(ファッションデザイン科)
期間:2022年2月〜2022年7月
こんにちは、ウィーン応用美術大学ファッションデザイン科に留学中の池部です。
オーストリアに渡航してから約3ヶ月が経ち、こちらの生活にも随分慣れてきました。
公用語がドイツ語ということもあり、入学手続きや仮住民登録の際に戸惑うことも多かったのですが、基本的には英語で生活しています。
まずはウィーンでの暮らしについてご紹介します。
私はウィーンの学生用のドミトリーで生活しており、大学からはトラムと呼ばれる路面電車で20分ほどの場所にあります。ルームメイト1名とシェアすることで家賃は月3万と節約した暮らしをしています。オーストリアはハプスブルク家を中心とし形成された伝統的なロココ調の建築が多く建ち並んでおり、美しい街並みを築いています。また、音楽の都と言われるだけあり、教会などオペラ座以外でもコンサートが頻繁に開かれており、休日に気軽にフィルハーモニーの演奏を鑑賞することができます。
オーストリアは首都ウィーンを中心に建物が集まっていますが、列車で少し離れると、美しい自然に囲まれたロココとは違う街並みや風景を楽しむこともできます。私のおすすめはオーストリアの外れにあるハルシュタットという街です。
ここからは私が所属しているウィーン応用美術大学のファッションデザイン科についてお話ししたいと思います。
大学では基本的に授業は全て英語で行われ、生徒も皆英語で話します。
留学生は私以外にドイツ出身の2名の学生が学んでいます。
クラスメイトの年齢層は思いの外高く平均が30歳ほどで、一度働いてから学び直すために大学に入学する人が多いようです。そのため技術的なレベルは高く、自分のブランドを立ち上げている人が何人もいます。
基本的に一年生から四年生まで同じ実習室でコミュニケーションを頻繁に行うため、あまり年齢や学年は関係なく過ごすことができます。また、著名なデザインナーであるモーデグラッセ教授を招いて行われる授業では、一年生から四年生まで平等に同じ課題に取り組みます。この日本ではあまりない授業形態はとてもいい刺激を受けました。
生徒は非常に能動的に制作に取り組んでおり、プレゼンテーションの前には学校で徹夜しながら作業するような生徒も多いです。
モーデグラッセ教授の授業に参加しつつ、一年生の基礎的なパターンやソーイングの授業、ポートフォリオのサポート授業に並行して参加しており、忙しいくも充実した毎日を過ごしています。モーデグラッセ教授の授業は与えられたテーマをもとに自由度の高い制作をそれぞれが行なっており、充実した設備の中で非常にレベルの高い制作を行なっています。また、最終講評はウィーンのフィルハーモニーのオーケストラをバックにファッションショーを行う予定になっており、生徒は高いモチベーションを持ち制作に取り組んでいます。卒業コレクションには有名なデザイナーの方々も来場されるとのことです。
卒業コレクションのプロジェクトでは基本的には制作物を最低1週間に一度にペースで教授や講師に見せ、ミーティングを行います。学生側が能動的に教授陣に自分の作品について相談をします。また先程も述べたように既に講師レベルの縫製やパターン技術を持っている生徒も多いため、学生同士の意見交換も頻繁に行います。私にとってそのような学生は頼りになる存在です。大学の授業の特徴としては一つの作品に対してリサーチやプロセスにかける時間がとても長く、教師側もすぐにデザイン画を描くのではなく、そこに辿り着くまでの背景に重きを置いているように感じられます。それらの要求に応えるよう課題に取り組むことで、日本での制作よりも丁寧にプロセスを踏むことができました。
一年生の方の授業では、少人数での授業が行われているため、一つ一つの作業をとても丁寧に指導していただきました。最初は英語の授業について行くので精一杯だったのですが、講師の方が付きっきりでサポートしてくれたおかげで今では授業に慣れることが出来ました。
4月上旬にコレクションのデザインミーティングが終わり、そこからイースターの休暇期間に入りました。デザインミーティングでは多摩美術大学とは違い、学生1人に対して教授や講師陣全員が集まりプランを発表するという形でした。
今回のプロジェクトではアーティストのイヴクラインが作りだしたインターナショナルクラインブルー(IKB)をコレクションのメインカラーとして、自分で選んだ詩を出発点に服を制作して行くことをテーマとしました。
私は折り紙の技法を応用したモジュール構造のテキスタイルを制作し、それを服のデザインに起こし発表しました。デザイン画は最低でも20枚以上描いた上で、その中から8着にまで絞るということでしたので可能な限り多く描きました。デザインミーティングでは折り紙を使った服の制作というのもこちらでは珍しかったためか、先生方からの評価は良く、この構造をどのようにして服の形に収めていくか丁寧に指導してくれました。
教育方針が基本的に個別指導なため、多摩美大学の大学院に近い印象を受けました。学生のやりたいことがはっきりしていればしているほど、それに合わせて機械や施設も紹介してくれます。
その後、イースターを挟んでからこの授業の担当教授であるグレース・ウェールズボナー氏を含めた先生方に対するデザインプレゼンテーションがありました。先生方から技法的な面に関しての指導をいただき現在、制作を進めています。
6/2にある最終成果発表のコレクションの様子などを交換留学報告で具体的に説明出来ればと思います。