2017年度短期交換留学生報告レポート1
テキスタイル専攻3年生の2名から、短期交換留学の報告レポートが届きました。
青山七海(3年)
グラスゴー美術学校(イギリス・グラスゴー)
期間:2017年9月〜2018年3月
こんにちは。
スコットランドのグラスゴー美術学校に留学中の青山七海です。
9月頭より新たな生活が始まり、早くも2ヶ月ほど経とうとしています。こちらは日の出が朝8時と段々遅くなり、気温は吐息が白く目に見えるほどの冷え込みとなってきました。
グラスゴーでの暮らし、まずは学生生活についてお伝えします。
私はFashion&TextileDesign科の3年生に属しており、今年は私の他に京都精華大学から1人、インドから1人の交換留学生がいます。
こちらのテキスタイルデザイン科は4つの専攻(print, knit, weave, embroidery)に分かれており、私はembroidery(刺繍)を専攻しています。
授業初日に1人ずつ、メインのスタジオにて作業スペースとなる机が割り振られました。
現在1つ目の課題を終え、これから2つ目の課題が本格的に始まろうとしており、また同時に2学期に開催されるファッションショーのリサーチや準備も行われています。
1つ目の課題は、インテリアに焦点を当てたコンペ22個の中から1つ選択し、その概要をquestionと定義して私たちはそれに応える(answer)という姿勢のもとでプロジェクトを進めていきました。コンペへの応募は義務ではなく、そもそも交換留学生は時期的に参加が難しいので、そこまで意識しなくていいよ~といった感じでした。またコンペ自体は締め切りがまだまだ先であり、これからも継続して進めていくといった学生が多いです。最終的な形としては、コレクションとなる4つのサンプルを完成させることが求められています。
デジタル刺繍とビニール素材を組み合わせたコレクションを計画しました。
私は今までインテリアとしてのテキスタイルを考えた経験が少ない上に刺繍を学んだこともなかったので、リサーチやドローイングから布へのトランスレートに少し苦労を感じましたが、今までとは違う思考回路を使うことに喜びを感じました。
制作期間中は週に1度、担当教授と1対1のチュートリアルや、教授を含めた5人ほどでのディスカッションがありました。ここではそれぞれの学生の作風に合ったアドバイスを頂けたり、他の学生の制作の様子が詳しく見られたりとたくさんの刺激を受けられます。
数回あったチュートリアルの中で、幾度も色と形への感覚に自信を持って良いと言っていただけたのはとても嬉しく、またコレクションの方向性を定めるのにとても支えとなった言葉でした。
そして私は刺繍の技術の他に、箔プリントやtextile vinyl(熱転写?)といったプリントの技術も組み合わせてみることを勧めていただき、表現の幅を広げることができました。
刺繍とプリントの技術を組み合わせた実験段階のものです。
技術指導の面では5回ほど、毎回学生4人のグループに対してチューターさんがミシンの使 い方やfabric manipulationと呼ばれる技術などを教えてくださるワークショップがありま した。また私はプリントの技術も試す必要があったので、プリントのチューターさんとお話しし て、2年生の箔プリントのワークショップに混じって指導を受ける機会も得ました。
そして2つ目の課題はDesign Domain2017というタイトルで、これはテキだけではなく他 学科も共通して行うプロジェクトです。 初日に1日かけて行う大規模なシンポジウムが設けられ、私たちは5つのレクチャーを聴講 しました。このレクチャーから自分のテーマを発見し、2週間かけてリサーチやドローイン グなどを、その次の1週間でサンプルを制作するという課題です。最終日にはスタジオを解 放してテキ以外の学生に公開するというので、納得できる形にまとめられるよう頑張りた いと思います。
以上のような実習の他にほぼ毎週一度、デザイナーの方を招いてプレゼンを聞いたり、実際にデザインスタジオへ訪問する機会があり、こうしてプロとして働く方々の様子を間近 で見られる態勢づくりはモチベーションに繋がって良いなと思います。
今まで学校に通っていて思うことは、学校全体が学生の一人一人を可能性の塊として大切 にしてくれていて、備品の貸し出しの自由具合や揃い具合、学生の難しい注文や相談に親 身に乗ってくださる様子を見ると、学生を育てる準備は万端だ!!という学校の気概を感じま す。 スタジオ内諸注意の中に「疲れている時に機械を使わないこと、休憩は必ずとること」と書 かれていたり、11時~11時半まではティーブレイクというランチタイムとは別の休憩時間が あり、学生も先生も休憩することを尊重されているのになんだか感動してしまいました。 またあらゆるスタジオ内で常に講師か学生がアップテンポな音楽を流して、誰もがみんな 機嫌良く楽しげな雰囲気で満ちているので、こちらも変な気を使わずリラックスして作品 制作に励むことができます。教授やチューターさん、そして同じスタジオにいる2-4年生は みんな困った時は助けてくれ、また作品について話しあうことを楽しむので、色々遠慮せずに話かけられるところが良いなと思います。 それと、それぞれの課題説明のときに、そのプロジェクトの最終的な目標は何か、それを 通して何を得るか、どういったプロセスが望まれるかなどが明記されているスタイルはわ かりやすく目指すべきところが見えやすいなと感じました。
次に、学校外の生活についてお伝えします。 私はかなり運よく、学校まで徒歩3分の寮に入ることができました。 ここでポーランド人2人、インド人1人(プロダクトデザイン専攻)とフラットシェアをしてい ます。ポーランドの子は実は1人学生ではなく、もう1人の子(版画専攻)が難聴のためそのサポートとしてここで暮らしています。
フラットメイト達はとてもフレンドリーで、何かとイベントなどに連れ出してくれるおかげで授業が始まる前からたくさんの学生と知り合うことができました。
自分の作品を通して仲を深めることもできました。
知り合った子達は他学科が多く平日あまり会う機会はないのですが、週末に遊ぶ予定を立てたりして会っています。
フラットメイトと共用キッチンを飾り付け、そこに友人を招いてpredrinkの時間を過ごしました。この後私たちが住む寮の別の棟で行われていた、学生主催のパーティーに向かいました。
ここの学生はとても活発で、学生が主となってイベントをすることが多くあります。それを知らせるポスターがあらゆるところに見受けられます。
食堂の壁
ポストにも
グラスゴーに住む人々はとても気さくで明るく、例えば知らない人がすれ違いざまにその靴いいね!と褒めてくれたりすることがあります。そしてとても優しいので、私の拙すぎる英語をよく理解しようとしてくれたり、私が英語を理解できず8回くらい聞き直しても嫌な顔せず伝えようとしてくれます。
グラスゴーの雰囲気は近代的かつ比較的落ち着いています。そして街全体がアートに対して開けており、美術館や博物館の人出は多く、レベルの高いストリートミュージシャンなどもよく見受けられます。
街中にあるユニークなデザインの時計台
近い範囲に観光名所が集まっていてアクセスしやすく、また個人的に気に入っている劇場
に出かけパフォーマンスを観たり、習い事に通ったりと、この街は日々を充実させるには
充分な場所だと感じます。
天候の変化は激しく、常に折りたたみ傘を持ち歩いています。風は強く、雲の流れていく
様子を見るのもちょっとした楽しみになってきます。気温については、9月上旬の時点でヒ
ートテックと薄手のセーターにブルゾンを合わせるほど寒かったです。室内は暖房が効い
ていて、今の所凍えるような思いはしたことがないです。
今まで、毎日が新たなこととの出会いで、一日一日を大切にしてもしきれないと思えるよ
うなとても恵まれた留学生活を送れていますが、私の留学前の様子を見て心配しつつも、
このような貴重な留学の機会をお許しくださった多摩美の先生方のおかげだと切に思いま
す。以前より成長した姿を帰国後に見せられるよう、今後も努力を重ねていこうと思いま
す。
青山七海
中村早良(3年)
ロンドン芸術大学 チェルシー・カレッジ・オブ・アーツ(イギリス・ロンドン)
期間:2017年9月〜2018年3月
こんにちは、中村です。
私は今ロンドンにある University of the Arts London(UAL)の中の1つ、 Chelsea College of Arts(Chelsea)にて勉強しています。
8月上旬にロンドンにきて早いこともう少しで3ヶ月が経ちます。ロンドンに来た時はまだ暖かく、夏にはファッションスクールで有名なCentral Saint Martinsの目の前にあるGranary Squareで子供達が水遊びをしていました。9月下旬頃から寒くなり始め、日が出ている時間が日に日に短くなってきました。もうすでにクリスマスに向けたディスプレイも見かけます。はじめに毎日刺激的なロンドンライフをレポートします。
写真は最近行ったレストランのユニークなトイレです。ロンドンはとても多国籍で、アートやファシッション様々なカルチャーと隣り合わせに生活している街だと感じました。ギャラリー、ミュージアムのほとんどが無料で観覧でき、街では毎日のように様々なジャンルのマーケットが開かれ、週末は朝からたくさんの人で大賑わいです。ギャラリーだけでなくストリートアートやオブジェなどジャンル問わずインスピレーションを受けることができます。
ロンドンでの滞在はフラットシェアと言ってアパートを数人で借りてキッチン、トイレ、バスルームを共同で使用し生活するスタイルが主流です。私はアーテ ィスティックな街イーストロンドンに位置するShorditchにあるアパートでフラットシェアしています(私の一番のお気に入りスポット)。初めての一人暮らしを海外で、さらに英語で契約するという、英語を話すことを得意としない私にはロンドンに来て1つ目のチャレンジでした。フラットメイトはフランス人、 イタリア人、スペイン人の社会人と学生6人です。毎日朝夜、一緒に料理して 食卓を囲んでそれぞれの国の話やたわいも無い話でリラックスした時間を過ご しています。歩いてすぐにはヴィンテージで人気なマーケットやおしゃれなカフェ、パブがありフラットメイトとよく散策しています。
私の通っているChelsea ではテキスタイルデザイン学科の第2学年に所属しています。校舎のすぐ隣には美術館がありChelseaの学生は行き来が自由です。
夜の校舎は光と相まってモダンでかっこいい。9月2 5日から1週間オリエンテーションがあり10月3日から授業が始まりました。テキスタイルデザイン学科の第2学年は全体で約80名、多摩美のテキスタイル専攻と比べると2倍ほどです。今年のテキスタイルへの交換留学生はNYから4人、オランダ、スコットランドから1人ずつ、私を含めて7名でした。
第1学年は一通りの技術をローテーションで学び、第2学年からは weave、knit、stitch、print、print plus の5つのスタジオに分かれて制作します。日本ではニット科をあまり見かけ無いことから knit を専攻する予定でしたが気持ちは変わるもの、私は選択肢に入っていなかったprint plusのスタジオに所属しています。print plus は print よりも幅広く様々な素材を扱うのが特徴です。多摩美と比べると施設は小さいですが学校にある道具、染料は自由に使えるのが嬉しいです。各教室に技術者がおり技術面において相談しながら進めることができます。
(左)染料を測る時に使うボックス/ (右)自由に使える染料
大学が始まってまだ1ヶ月ほどですがこちらの授業、生活を通して自分に足りないことが見つかりました。それはリサーチです。週に1回先生との1:1のミーティングが設けられています。そのミーティングはすべて自分発信で進行します。そこで重要になってくるのがリサーチです。自分がこの何を見てきたか、何を参考にしてきたか、歴史的な事柄から参考になるアーティストの文献まですべてのリサーチの量が作品の重量につながります。こちらの学生と会話では、カルチャーに関して思っていること感じていることを意見交換すること、自分の知っている知識を他人と共有することが日常茶飯事です。皆たくさんの意見、知識を持っていてその点で違いを感じました。それは制作のなかでリサーチが一番重要視されているからだと思います。
現在は10月3日からはじまった Color project で11月下旬の作品提出に向けてリサーチ、サンプル作りをしています。デスクは今の進行状況やイメージを確認できるようにドローイングやコーラージュをはるよう指示されています。
リサーチする時間が長く設けられておりタイトに課題を進めていた私にとってはとても新鮮で自身の制作を深めるチャンスだと感じます。自分の足りない部分を埋めるためにも、アート、ファッション、カルチャーに触れながらリサーチを進めて留学生活、刺激的な毎日を送りたいです。
次のレポートで今回のprojectの様子、後に予定されているパリで行われるPremiere Visionへ出展のためのprojectの様子などお伝えできたらと思います。
中村