チェルシー・カレッジ・オブ・アーツ(イギリス)
松浦美宇


チェルシー・カレッジ・オブ・アーツは伝統的で美しいレンガ造りの建築です。伝統的な外観ですが、所々修繕が重ねられ、モダン建築と融合しているところが興味深いと感じました。イギリスにはこのような建築が沢山あり、趣のある空間の中で学ぶことができました。

1つ目の課題は”the costume for dancer”という、ダンスパフォーマンスに合うテキスタイルデザインを 提案するというものでした。私は舞台衣装における身体の変容に注目し、人間を始めとする生物の皮膚の 透明感やテクスチャーを刺繍で表現し、人間の体が生々しく変化するイメージでドローイングと刺繍での 実験を重ねました。 Berninaの刺繍ミシンの使い方の指導を受けたのですが、 Berninaは基本的な左右往復のステッチと、プログラムされたいくつかのパターンを表現することが可能です。embellisherという機械(ニードルパンチ)での表現にも取り組み、より理想に近いものをつくること が出来ました。

2つ目の課題は”Design for Good”というものでした。テキスタイル業界における環境負荷や、労働環境の問題などの循環可能なアイディア提案や問題を解決することを目的とした課題です。私は廃棄される予定の布を工場からいただき、様々な技法で再利用することを基本アイディアとして制作をしました。

JUKIの工業用刺繍ミシンは1つ目の課題で使ったBerninaよりも広い幅のスティッチを加えることができ、表現の幅が広がりました。ヒートプレスでの色付けはポリエステルなどの合成繊維の多いブライダルファブリックの加工には適していました。授業はコミュニケーションやディスカッションが重要視されており、アイディア出しの段階であっても、ディスカッ ションすることに2コマの時間を要し行ったことに驚愕しました。各自のリサーチを行う前から意見交換を行うことで自分には無い視点を知り、お互いの知識を共有することが出来ました。

課外では春休みを利用してイギリスとパリへ旅行し数多くの美術館を訪れました。日本と大きく違う点は 世界各地から集められた美術品や文化財の常設コレクションの豊富さです。ロンドンには無料で観覧でき る美術館や博物館が沢山ありました。あらゆる文化財がガラスのケースの中に陳列されている姿は、その時代の空気や生活感、人々の感情に溶け込んでいたものが切り取られている様に感じられ、純粋な美しさだけを感じられない違和感を覚えました。

イギリス音楽や劇場などのエンターテイメント文化は、人々の中で生きている様を感じ素晴らしいと思いました。地下鉄には多くの劇場やライブのポスターが貼られており、街中や地下鉄の中にまで演奏を許可されたスポットがあり、日々様々な人の演奏を聴くことができます。世界的感染症の広まる中、予期せぬトラブルにも巻き込まれましたが、そんな時だからこそ現れる各国の文化の差を学ぶことが出来ました。失敗や不運も交換留学ならではの有難い経験として、これからの行動に活かしていきたいと思います。