岩本 千種 In her room 1人暮らしをはじめた。 7帖の部屋にはただわたしだけで、椅子もカーテンも壁を彩る葉書も、机の上の果物も、重なり合う色も時間もすべてわたしのものだった。 空がしらむ前のつめたくもぬるくもない ぐにゃりとした時間に、わたしは絵を描く。 夜も朝もこのせかいにはなかった。 ただわたしと、目の前の少女たち。 部屋の中のいちばん奥のいちばんちいさな部屋。 すべてはこの部屋から。